7月の選挙応援演説中に銃撃され、死去した安倍晋三元首相(享年67)の国葬が27日、東京・北の丸公園の日本武道館で行われ、菅義偉前首相(73)が追悼の辞を述べた。
友人代表として壇上に立った菅氏は「あれからも朝は来て、日は暮れていきます。やかましかったセミはいつの間にか鳴りを潜め、高い空には、秋の雲がたなびくようになりました。季節は歩みを進めます。あなたという人がいないのに、時は過ぎる。無情にも過ぎていくことに、私はいまだに、許せないものを覚えます」と、安倍元首相亡き日々にむなしさを口にした。
菅氏は、会場近くの献花台に多くの人が花を手向けに訪れている様子を、安倍元首相に呼びかけるように説明。「総理、あなたは今日よりも、明日の方が良くなる日本を作りたい。若い人たちに希望を持たせたいという強い信念を持ち、毎日毎日、国民に語りかけておられた。そして“日本よ、日本人よ、世界の真ん中で咲き誇れ”。これがあなたの口癖でした」と懐かしんだ。菅氏の言葉を、昭恵夫人もハンカチで涙をぬぐって聞き入っていた。
第2次安倍政権で、官房長官として安倍元首相とタッグを組んだ。安倍元首相が体調不良で辞任した後、自民党総裁選への再出馬を説得したのは菅氏だったという。「最後には2人で、銀座の焼鳥屋に行き、私は一生懸命あなたを口説きました。それが使命だと思ったからです」と回想。「3時間後にはようやく、首を縦に振ってくれた。私はこのことを、菅義偉生涯最大の達成として、いつまでも誇らしく思うであろうと思います」と胸を張った。
安倍元首相は2期の政権で、日本憲政史上最長の通算8年8カ月、首相を務めた。7月8日、奈良市内で参院選の応援演説中に背後から銃撃され、搬送先の病院で死亡が確認された。岸田文雄首相は国葬の実施を閣議決定したが、国会での審議を経ずに決定した過程などに国民の意見は分かれ、この日も東京・日比谷公園で抗議デモが行われた。