財務省が15日発表した8月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆8173億円の赤字だった。エネルギー価格の高騰や円安で輸入額が前年同月比49.9%増の10兆8792億円に膨らみ、輸出額の伸びを上回った。赤字額は東日本大震災の影響が大きかった2014年1月を上回り、比較可能な1979年以降で単月の過去最大となった。
14年1月は2兆7951億円の赤字だった。震災後の原子力発電所停止により火力発電所用の燃料輸入が増えていたほか、同年4月の消費増税を控えた駆け込み需要も輸入額を押し上げていた。22年8月は8年7カ月ぶりに当時を上回った。
貿易赤字は13カ月連続。15年2月までの32カ月に次ぐ過去2番目の長さとなっている。
22年8月の貿易赤字額はQUICKがまとめた民間エコノミスト予測の中心値(2兆3981億円)を上回った。
輸入額が前年同月を上回るのは19カ月連続だ。アラブ首長国連邦(UAE)からを中心に原油を含む原粗油が90.3%増えた。オーストラリアからを中心とする液化天然ガス(LNG)は2.4倍となり、石炭は3.4倍に増えた。
原粗油の輸入は金額ベースで17カ月連続で増加し、数量ベースでも10カ月連続で増えた。通関での円建て輸入単価は1キロリットルあたり9万5608円で、前年同月から87.5%上昇した。ロシアのウクライナ侵攻で原油価格が上昇したほか、急速な円安が輸入額を押し上げた。
輸出額は22.1%増の8兆619億円だった。18カ月連続で前年同月を上回った。数量ベースでは1.2%減と6カ月連続の減少で、円安局面でも低迷する。部品などの供給制約が緩和されてきた自動車の輸出額は39.3%増え、中国向けなどの半導体等製造装置も22.4%増となった。
地域別では、対米国の黒字が20.7%増の4715億円と、2カ月ぶりの増加となった。自動車や自動車部品などが伸び、8月の輸出額としては過去最高となった。輸入額は単月で過去最大で、医薬品や原粗油が伸びた。
対アジアの輸入、輸出額はともに8月としては最高だった。このうち対中国もともに最高となった。中国からの輸入は衣類や通信機が増え、中国への輸出はハイブリッド車などが伸びた。対中国の貿易収支は5769億円の赤字だった。赤字は17カ月連続で、赤字額は2.7倍に増えた。
対ロシアの貿易収支は1091億円の赤字だった。日本政府の輸出禁止措置などにより輸出額は21.5%減の549億円だったが、輸入額は67.4%増の1641億円となった。原粗油の輸入額が103億円だった。主要7カ国(G7)は輸入禁止で合意しているが、通関手続きの関係で過去に到着したものが計上されたとみられる。
貿易統計上の8月の為替レートは1ドル=135円08銭で、前年同月に比べ22.9%の円安だった。足元の為替レートは143円前後まで円安が進んでいる。ロシアのウクライナ侵攻で拍車がかかった原油や小麦などの資源・食料価格の高騰は一服しているが、前年に比べれば高水準だ。貿易赤字の拡大傾向は続く可能性がある。