止まらない円安と物価高騰。にもかかわらず、岸田総理は「減税」という最善策を決して実行しようとしない。その背後には、決して減税を許さない「最強官庁」財務省の恐ろしい力がある。前編【岸田総理、支持率暴落でも「消費税減税」は絶対ナシ…「ザイム真理教」のヤバすぎる洗脳】に続いてその実態をお伝えする。
安倍元総理「一生の不覚」
財務省の権力の源泉は、予算だけではない。政治家のコントロールにも、どの官庁より長けている。
どんな木っ端議員にも、当選すれば財務官僚たちは列をなして挨拶にやってくる。「東大出のエリートが雁首揃えて頭を下げれば、田舎の議員なんてそれだけでコロッといく」(前出の自民党中堅議員)が、彼らはポッと出の人間に興味などない。
「安倍(晋三元総理)さんが生前、こう言っていたんです。『財務省がうまいのは、世襲議員にだけ目をつけて、その地元の予算をドンと増やす。そして〈先生は他の議員とは違う。目先の人気取りで減税なんておっしゃるはずがない。百年先の日本を考えて、財政再建をやり遂げることこそ、先生の使命です〉と言う。俺もしつこくやられたよ。この手法で、何人も手なずけてきたんだ』と。
麻生(太郎自民党副総裁)さんなんか、この典型です。エリートにおだてられて、予算も欲しいところに好き放題つけてくれるから気分がいい。麻生さんは代替わりも迫っているから、手元に財務省を置いておきたいんです」(安倍氏に近かった自民党ベテラン議員)
その一方で、彼らは総理大臣すらも平気で欺く。直近では、まさに安倍元総理がそのターゲットとなっていた。自民党閣僚経験者が証言する。
「アベノミクスで積極財政を推し進めた安倍さんが財務省を警戒していたのは有名ですが、その安倍さんが『一生の不覚』と言っていた出来事がありました。
岸田総理など赤子も同然
’15年に閣議決定した『骨太の方針』に、財務省が小さな但し書きで『社会保障関係費は過去3年間の増加が1.5兆円となっていることを踏まえ、その基調を継続させる』『国の一般歳出は過去3年間の増加が1.6兆円となっていることを踏まえ、その基調を継続させる』という二つの項目を書いていた。
要するに『予算1.6兆円引く社会保障関係費1.5兆円で、社会保障費以外は3年間に1000億円しか予算は増やしませんよ』という理屈をまぎれ込ませていたのです。
安倍さんはこれに気付かず閣議決定してしまった。亡くなる直前の会議でも『私は知らぬ間に財務省に財政規律を閣議決定させられた。もちろん責任は私にあるが、誰も気付かないような書き方をして、財務省はあまりに不誠実だ』と憤っていました。この制約は、岸田政権の『骨太の方針』でもまだ生きています」
あまりに老獪。放心状態にある今の岸田総理など、彼らにとっては赤子のようなものだ。
まして、今の岸田総理を取り囲む顔ぶれは、財務官僚とそのOBばかり。
「官邸をもっぱら牛耳っているのが、茶谷栄治財務事務次官です。主計局次長から首相秘書官に入った宇波弘貴や、同じく秘書官の中山光輝と密に連絡を取り合っている。また政治家サイドで言えば、木原誠二官房副長官、岸田派幹部で自民党税調会長の宮沢洋一さんと、旧大蔵省出身者が経済政策を一手に引き受けている」(官邸スタッフ)
総理をコントロールする「二人の政治家」
とりわけ宮沢氏は、’42年に大蔵省へ入省、池田勇人政権の経済ブレーンを務め、蔵相や総理大臣を歴任した宮澤喜一氏の甥。自身も’93年まで大蔵省に籍を置いた、生え抜き中の生え抜きだ。
「岸田総理は同郷の宮沢さんに頼り切りだし、木原さんも大先輩には何も言えない。宮沢さんがこの夏の参院選で改選された後、財務官僚は宮沢詣でに行列を作っていました。宮沢さんも議員を次々に呼んで『税制は政治の要だぞ』などとしきりに講釈している。財政に関することは全部オレを通せ、というわけです」(自民党岸田派所属議員)
また岸田総理のライバル・林芳正外相も、父・義郎氏が大蔵大臣を務めた、親子二代にわたる財務省一派。宮沢氏や林氏を通じて、財務省は事実上、岸田総理をコントロールしているのだ。
「総理は経済の知識がないから、財務省との折衝を宮沢さんと林さんに任せているんです。今回打ち出したNISA恒久化やガソリン補助金は一見、税収が減って支出が増える財務省が嫌がりそうな政策ですが、財源が予備費なので痛くも痒くもない。岸田さんは『オレは財務省の言いなりじゃないぞ』と思っているかもしれませんが、実態は全部財務省に振り付けられて、適度に独自色が出るような形で踊らされているわけです。
財務官僚は『岸田ほどやりやすい奴はいない』と言っている。抵抗してばかりの安倍さんや菅(義偉前総理)さんがようやく消えた。岸田総理は生かさず殺さずでいこう、と」(前出・岸田派所属議員)
国民から見放され、役人にはカモにされる。岸田総理とて、そんなふうになるために総裁選に出たのではないだろう。
ここが勝負の時だ。未来永劫「財務省の操り人形」と言われて石を投げられるか。それとも、国難に際して「減税」で民を救った大宰相となるか――今、岸田総理はその瀬戸際に立たされている。