2021年度、神奈川県と県内33市町村に集まったふるさと納税の寄付金は、計155億203万円で過去最多となったことが、総務省の調査でわかった。これに対し、寄付に伴う住民税の控除額は今年度計595億4692万円で過去最多となり、横浜市や川崎市では、市税の「流出」が拡大している。
寄付金の受け入れ額は、南足柄市が前年度比7937万円増の29億2126万円で県内トップ。市内で製造されるビールや化粧品などの返礼品が人気という。ただ、ビール工場は来年閉鎖されるため、キャンプ場の宿泊券などの返礼品のPRに力を入れる。寄付の半額は事務経費などに充当されるが、市財政課は「財政規模が大きくない自治体には、財源の大きなウェートを占める」とする。
2位の鎌倉市は、加工肉やシャツの返礼品が人気を集めて17億394万円、3位は旅行クーポン券が人気の箱根町で12億8002万円だった。
寄付先に選ばれた自治体には貴重な財源となるが、納税者が居住する自治体では住民税が控除され、税収が減ることになる。
横浜市の市税流出額は22年度、前年度比53億1340万円増の230億890万円で全国トップ。一方でふるさと納税による昨年度の寄付は、3億3708万円にとどまった。制度上、減収の75%分は国から穴埋めされるが、市財源課の担当者は「25%にあたる57億円超の市税を失うのは影響が大きい」と頭を抱える。
市はライバル自治体への対抗策として、2年前から返礼品を充実させる方針に力を入れ、最近では横浜中華街の点心詰め合わせ、高級ホテルの宿泊券など49種類を追加し、巻き返しを図っている。
横浜市よりも深刻なのは川崎市だ。今年度は102億9132万円の税収が流出したが、国から「市の財政状況は豊か」と判断されているため、国からの 補填ほてん はない。失われる税収は、市内全世帯の4分の3にあたる56万世帯超のごみ収集と処理費に相当する。
市財政課の担当者は「行財政改革などで減収分の財源を確保し、市民生活に影響が出ないようにしている。国に制度の見直しを求めたい」と語る。
県の21年度ふるさと納税受け入れ額は1億1087万円、今年度の住民税控除額は148億9344万円だった。