出生率の悪化に伴い、このまま行けば将来の年金給付水準が悪化するのは避けられない。選挙後の岸田政権を襲う悪夢のシナリオとは。
東京・霞が関の合同庁舎第5号館にある厚生労働省大臣室。同省年金局幹部が後藤茂之厚労相に話を切り出した。「出生率の悪化により、次の財政検証では将来の年金給付水準(所得代替率=現役世代の手取り収入に対する年金額の割合)が50%を割るのは間違いありません。そのまま何もしなければ、政権は倒れかねません。将来給付水準を改善する答えを用意しておくことが重要です」。それを聞いた後藤厚労相は「そうだよな」とうなずくしかなかった。
選挙後、封印してきた「難題」が一気に噴出?
7月10日の投開票日が近づく参院選。そこで勝利を収めるまでは、メディアに批判されようが難しい課題は先送りし、安全運転に徹してきたのが、岸田文雄政権だ。参院選を乗り切れば、次の参院選や衆院議員の任期満了は、3年後の2025年までやってこない。選挙に勝てば、岸田首相は念願の長期政権の座を手にし、政策にも腰を落ち着けて取り組むことができる。永田町ではこれを「黄金の3年」と呼び、岸田政権がそれを勝ち取れるかに注目が集まる。
しかし、「黄金の3年」などというものは本当に実現するのか。
野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト
選挙後の岸田政権を襲う「悪夢の3年」のシナリオ
出生率の悪化に伴い、このまま行けば将来の年金給付水準が悪化するのは避けられない。選挙後の岸田政権を襲う悪夢のシナリオとは。